ラジカル重合の停止反応|再結合と不均化の違い 高分子化学
ラジカル重合の素反応に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
①
ラジカル重合は開始反応、生長反応、停止反応、連鎖移動反応からなる連鎖重合反応である。
②
熱や光によりラジカル重合開始剤から生成したラジカルの活性が高すぎるとモノマーと反応する前に消失し、逆に生成したラジカルが安定すぎるとモノマーと反応しないこともある。そのため、ラジカル重合では適切な寿命を持ったラジカルが重要である。
③
生長反応とは、開始反応で生成したラジカル種がモノマーと連続的に反応することで高分子鎖が形成される反応のことである。
④
停止反応には再結合停止と不均化停止があり、不均化停止したポリマーの分子量は再結合停止したポリマーの2倍となる。
⑤
エチレンのラジカル重合における分子内連鎖移動反応は低密度ポリエチレンにおける枝分かれ構造形成の原因となっている。
正答
④ 停止反応には再結合停止と不均化停止があり、不均化停止したポリマーの分子量は再結合停止したポリマーの2倍となる。
再結合停止と不均化停止:分子数と分子量の違い
選択肢④は、分子量の大小関係が逆です。不均化停止では2本の成長鎖が別々の分子として残り、再結合停止では2本がつながって1分子になります。
| 停止様式 | 起こる反応 | 停止後の分子数 | 鎖の長さ |
|---|---|---|---|
| 再結合停止 | 2つのラジカル末端が結合する | 1分子 | もとの2本を合わせた長さ |
| 不均化停止 | 鎖の間で水素原子が移動する | 2分子 | それぞれの鎖の長さを保つ |
不均化停止では、一方に二重結合を持つ末端ができ、もう一方は飽和した末端になります。同じ平均長さの成長鎖が停止する条件で、末端基の質量差や連鎖移動の寄与を無視して比べると、再結合停止で得られるポリマーの数平均分子量は、不均化停止の場合の約2倍です。異なる重合条件で作った試料や、個々の分子の分子量が必ず2倍になる、という意味ではありません。
分子内連鎖移動とポリエチレンの枝分かれ
選択肢⑤のエチレンのラジカル重合では、成長中のポリマー鎖の末端にある1級ラジカルが、同じ鎖の内部の水素原子を引き抜き、2級ラジカルを形成します。このような分子内連鎖移動をバックバイティングと呼びます。新しいラジカルの位置からエチレンが付加すると側鎖が成長し、低密度ポリエチレン(LDPE)の枝分かれ構造を生む原因になります。
チーグラー・ナッタ触媒による配位重合では、ラジカル重合とは異なる機構で鎖が成長し、枝分かれの少ない高密度ポリエチレン(HDPE)を作ることができます。
分子量の比較の参考資料
MIT「Synthesis of Polymers」Lecture 13(3ページ)では、不均化停止と再結合停止の数平均重合度を比較しています。